
メタボリックシンドローム~肥満と脂肪細胞の科学~
研究室概要
エピゲノム解析から生活習慣病を解明
肥満にともなう2型糖尿病、高血圧、高脂血症、冠動脈疾患といった生活習慣病やがんなどの多因子疾患の解明は21世紀の生物医学の大きな課題となっています。これらの疾患は遺伝的素因とともに栄養を含めた環境からの刺激も大きく関与します。環境変化などの刺激はDNAやヒストンのメチル化などの化学修飾がエピゲノムとして記録され、生活習慣病の発症に深く関与していると考えられています。私たちは環境刺激や栄養による代謝変動やエピゲノム変化を解明し、体質改善と生活習慣病への新規治療法を目指しております。
このために、
(1)寒冷・絶食におけるシグナルをメタボロームとエピゲノム解析から解明
(2)脂肪細胞に分化していくエピゲノム機構の解明
(3)寒冷刺激に適応したエピゲノム解析から脂肪を燃焼しやすい「良い脂肪細胞(ベージュ細胞)」へ誘導する機構の解明
を目指し、エピゲノム酵素への翻訳後修飾を標的とする生活習慣病への新たな治療標的の創出を目指します。
親から子へ受け継がれるエピゲノムの解明
受精前の父親の寒冷環境刺激は子孫にエネルギーを消費し熱産生しやすい体質として継承され、現代社会にあっては肥満や生活習慣病になりにくい体質を形成することがわかりつつあります。私たちはこの寒冷環境を記憶するエピゲノム機構を中枢-脂肪組織における一細胞レベルでの解析、ヒトにおける臨床データ解析、中枢神経操作などから解明し、この機構に基づく生活習慣病への画期的な予防・治療法の創出を目指します。



酒井 寿郎 / 酒井研究室